逆さ撮り・盗撮犯罪小説「パンティ・イーター」

同僚から国際線CAまで半年間で200人以上を逆さ撮りした撮り師の独白

プロローグ: 世はまさに「大盗撮時代」

「おい、待て!」

 

帰宅の途につく人々でごった返すJR新宿駅を40代の男が必死の形相で走る。それを追うもう一人の男。改札を出たところで40代の男は追いかけてきた男と交番の警察官に取り押さえられた。

 

「なんですか。」

 

「お前、盗撮してただろ。」

 

「やってませんよ。」

 

「ウソをつくな!見てたんだよ。」

 

興奮して話す二人に周囲の人々は歩きながら目を向ける。警察官数名が40代の男を囲むように立ち、数分立ち話をした後、男を連れて行く。一緒に、追いかけて男を捕まえた男性と女性警察官に付き添われて歩く若い女性の姿があった。

 

 ・・・おそらくこんな光景だったであろう。2016年8月26日午後6時35分ごろ、東京都迷惑防止条例違反容疑で、裁判官出身の法務省法務総合研究所教官飯島暁容疑者(43)=東京都葛飾区小菅=が逮捕された。JR新宿駅のホーム上で女性のスカート内をスマホで盗撮した疑いだ。


警視庁新宿署署によると、近くにいた男性会社員が不審な動きに気づき、持っていた鞄で飯島容疑者の手をつついたところ、逃走。改札の外まで追いかけ、交番にいた警察官と一緒に取り押さえた。約3分間の動画には女性の全身やスカート内が映っていた。飯島容疑者は「スカート内にはスマホを差し向けていない」と否認していたが、その後容疑を認めたという。

 

今の日本にはこんなニュースが毎日のようにインターネットに流れている。別の日には、大阪国税局調査第一部主査隅田憲悟容疑者(48)=大津市錦織=が逮捕された。JR京都線高槻-京都駅間を走行中の新快速で、大学生の女性(20)のスカートの中をスマホで撮影した疑いだ。隅田容疑者は当日、家庭の事情で早退。帰る途中の電車で、ボックス席の斜め向かいで寝ていた女性を撮影した。目撃した乗客の男性が隅田容疑者と女性を連れ、京都駅で駅員に知らせた。隅田容疑者のスマホには、女性のスカート内を撮影した約10秒の動画が残っていたという。

 

仕事を早退するほどの家庭の事情とは何であったのか不明だが、その帰路に盗撮で逮捕されるなんて、その後の家庭の崩壊が目に見えるようだ。法務省国税局とエリート街道を歩んできたような中年男性が、3分や10秒の動画で仕事、家庭、そして人生を狂わせる。

 

盗撮で逮捕された輩の職業を列挙すると、塾経営者、消防庁職員、町役場係長、レストラン経営者、大手企業の部長、フリーカメラマン、自衛官、教員、市役所職員、果ては警察の巡査部長などまでいる。

 

法務省作成の犯罪白書では、盗撮での検挙数は平成21年度の1,480件から平成26年が3,265件にまで増加している。犯行場所では,駅構内が32.2%(1,049件)と最も高く,次いでショッピングモール等商業施設が28.5%(929件)であり,供用物では,スマートフォン・カメラ付き携帯電話が70.9%(2,312件)と最も高く,次いで小型(秘匿型)カメラが11.0%(359件)。

 

高い地位にある者や国を守る自衛官、取り締まる側の警察官までが手を染めてしまう盗撮。その悪魔の魅力に心を奪われた者は、たった一人の女のパンティを見るために、積み重ねてきたキャリアや築いてきた家庭を壊すリスクを負ってまでカメラを向ける。目の前にミニスカートの若い女、手にはスマホ。それだけで日々いたるところで盗撮ができてしまう時代なのだ。駅や電車を始め、あらゆる階段、エスカレーター、そして職場や更衣室、トイレ、温泉など様々なカメラが女たちの下着、裸を狙っている。

 

そして毎年逮捕される数千人の男たちは、氷山の一角に過ぎない。下手をこいた雑魚と言ってもよい。この世には逮捕もされず数多くの女たちを盗み撮りする手腕に長けた「撮り師」と呼ばれる者たちがいるのである。撮り師の撮る写真や動画は高画質で量も多く、ネットで売買される。海外の回線を使ったサイトでは被害女性の顔もおかまいなしに写し出され下着や裸が見られているのである。警察の検挙や取り締まりも追いつかない盗撮犯罪の数々。

 

 

世はまさに「大盗撮時代」。

 

 

ここから話すのはこの「大盗撮時代」の頂に君臨した一人の撮り師の男の物語である。

 

短期間でまたたく間に大胆な撮影技法を身に付け、ひと夏で200名以上の女のスカートの中を撮影に成功し、逮捕歴はゼロ。街行く会社員を始め、同僚の女子社員約20名、国際線CA、美人ピアニストやピアノ講師、音大生などのパンティをコレクションに収めた。後に「パンティ・イーター」の異名で知られた撮り師生き様の記録である。